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趣味の野鳥撮影に必要な3つの要素

趣味の野鳥撮影に必要な3つの要素

趣味の野鳥撮影に必要な要素は大きく3つあると考えています。

  • 機材
  • 技術、経験
  • 環境

今日はこの3つの要素について10年ほど野鳥を撮っている趣味カメラマン目線から考えてみたいと思います。

※どちらかというと「精細に撮る」ということにフォーカスしていますので、いわゆる「芸術的な写真を撮りたい」というのとは少し違うと思います。その点はご了承ください。

機材

野鳥撮影には非常に機材が重要です。

野鳥撮影では焦点距離500mm~600mmのレンズが標準画角といわれていますが、できればAPS-C 2000~2600万画素程度で単焦点800mm~1200mm/F5.6くらい欲しいというのが現実です。
またボディもAF性能、連写性能、手振れ補正性能が高いものが求められます。
(APS-Cで書いたのは、フルサイズで撮ってもほとんどの場合クロップするためです)。

野鳥撮影では技術や経験のほとんどは機材で埋めることができますので、本気で野鳥撮影をするならばまずその時の最高機種を購入してしまうのをお勧めします。

機材にお金をかけずに野鳥を撮影すると、

  • どうしても越えられない画質や性能の壁にぶつかる
  • チャンスをものにできなくてストレスがたまる
  • 足りない性能を埋めるために無駄な労力がかかる

など、あまり良いことはありません。結果として機材買い替えでさらにお金がかかってしまいます。

もちろん、趣味ですから少しずつ改善していく楽しみもありますので、沼にはまっていきたい方は安い機材からはじめてもよいと思います。

ただ、安い機材でも頑張れば高い機材と同じ品質の写真が撮れるというものではないので、できる限り高性能なものを使うことをお勧めします。

おおむね、600mm F4のレンズと高画素でAF機能に優れた機種であれば快適に撮影できます。
なぜ野鳥撮影でロクヨン(600mmF4)や高画素機が人気なのでしょうか?

焦点距離

レンズ焦点距離800mm~1200mmと書きましたが、このくらいの焦点距離があると野鳥があまり警戒しない距離から満足な品質の写真を撮ることができます。

ロクヨンは焦点距離的にはAPS-Cクロップで撮れば600mm x 1.5(or x1.6) = 900~960mm、さらに画質的に妥協できるExtender x1.4で 900~960mm x 1.4 = 1260~1344mmとなり、状況に応じて800~1200mmくらいを調整して使える都合の良いレンズで、さらに重量や大きさ的にも持ち歩いてギリギリ手持ちで撮ることができます(3kg)。

「Extender x1.4は画質がかなり劣化する」と考えてしまうと思いますが、実はロクヨンの場合はそこまで劣化しません。ズームレンズにつけると画質が相当劣化する上にF値が非常に高くなってしまうのであまりお勧めはしませんが、ロクヨンの場合はむしろオススメします。


Canon EOS R5 840mm ƒ/6.3 1/500s 200 

※距離は大体20m~25mくらい、ロクヨンにExtender x1.4、APS-Cよりもさらにクロップしているので画素数はかなり少ないですがシャキっとしていて必要十分くらいの解像度はあります。

F値

野鳥撮影は常にピントとブレ、画質との戦いです。

一般的にF値が低いレンズ(明るいレンズ)の方がAFは高速かつ正確に動作する

最近は低輝度限界も向上してF22までAF追随してくれるじゃないかと思うかもしれませんが、F値が大きくなるほど精度も速度も無視できないくらい悪化します。

明るいレンズの方がシャッタースピード(SS)を上げることができるためブレを抑えられる

SSについては最近は手振れ補正が強力だし低くていいじゃないか思うかもしれませんが、野鳥撮影の場合は「被写体ブレ」の方が深刻です(手振れ補正では被写体ブレは抑えられません)。動き回る小鳥やその飛び込みをしっかり撮ろうとするとSSが1/4000くらい必要で、さらに近年はセンサー解像度も高くなってきてブレはよりシビアになっています。

とはいえ、どうしてもSSを上げられないときはありますのでそういう時は連写でとりまくって「たまたま」ブレなかったものを採用する感じになりますが歩留まりは最悪です。

低ISOで撮影するためにはF値かSSを下げる必要がある

ISO耐性が向上してるんだからISOを上げればいいじゃないかと思うかもしれませんが、いまだにISO1000を超えるとザラつきが目立ちます。耐性が向上したというのは「ISO128000など高ISOで使い物にならなかったものでもなんとか使い物になる写真が撮れる」という意味合いのように感じます。

ISOを下げるためにはF値かSSを下げる必要があり、結果としてF値を下げられる明るいレンズが必要になります。

以下は600mm F6.3という少し暗めのレンズで撮影したので、SSとISOを両立させるのは困難なためせっかくのカワセミのダイブ撮影にも関わらずどちらももう一歩の結果になりました。

ILCE-7RM4A 600mm ƒ/6.3 1/1600s 1600 

※SS 1/1600だとカワセミが被写体ブレしてボヤけています。


ILCE-1 600mm ƒ/6.3 1/4000s 3200 


ILCE-1 600mm ƒ/6.3 1/4000s 3200 

※SS 1/4000だとシャッキリしますが、F6.3なのでISOが3200まで上がってかなりザラついています。

できるだけ明るいレンズをお勧めします。

ズームと単焦点

また、ズームと単焦点ですがこれはもう埋めようのない画質の差があります。
FE200-600は本当にデキの良いズーム600mmですが、やはりロクヨンと比べると相当厳しいものがあります。

レンズの解像力評価などがいろんなサイトでレビューされていますので参考にしてください。
単焦点でもRF600F11などは画質はそこまでよくありません。

おおむねですが600mmズームレンズは10mくらいの距離で撮らないとシャッキリしませんが、ロクヨンの場合は20mくらいならシャキっと撮れる感覚です。30mくらい離れていてもロクヨンの場合はWEBに貼るくらいなら全く問題ありません。

野鳥撮影してみるとこの10m~20mの距離を縮めるのがどれだけ大変かが痛感できると思います 😛


ILCE-1 600mm ƒ/6.3 1/1000s 1000 

※FE200-600のズームレンズで撮ったカワセミ


Canon EOS R5 600mm ƒ/4.5 1/500s 1250 

※RF600mm F4Lで撮ったカワセミ

AFスピード

単焦点の大砲レンズのAFは非常に高速です。
FE200-600もAFスピードは高速なのですがロクヨンなどには全く勝てません。

しかしながら、ミラーレスとなってボディ性能でかなりAFスピードに差が出るようになりました。
ボディのAF性能にはかなり気を配りましょう。

2022/05現在では、間違いなくSONYのα1が頭一つ抜けています。
私はCanonとSONYはフラグシップボディを使ったのでその比較になりますが、α1は1DX系並みの速度でかつR5よりも高い精度で鳥瞳AFやトラッキングしてくれる万能ボディです。
カワセミの飛び込みは30コマにも関わらず連写2ショット目くらいからガチピンです。
散歩撮影でも、野鳥がいるあたりでシャッターボタン半押しにすればもう何もしなくても鳥がフレーム内のどこに移動しても追いかけて、さらに瞳AFしてくれるので楽しくなります 🙂

EOS R7に期待していますが、ちょっとα1並の性能は無理かな…と思っています。
ボディのAFは今後も各社しのぎを削っていく分野ですので注視しましょう。

画素数

オススメにAPS-C 2000~2600万画素(フルサイズなら5000万画素~6000万画素くらい)と書きましたが、このくらいの解像力があって焦点距離800~1200mmくらいで撮ることができれば、現実的な撮影距離からスズメくらいの小鳥でも羽毛を解像させることができます。

もちろん画素数だけではなく画素あたりのセンサー面積も大切ですので画素が多ければよいというものではないのですが、EOS 90DなどのAPS-C 3250万画素機は色ノリなどがそこまで気になるレベルではないと感じています。


Canon EOS 90D 840mm ƒ/5.6 1/80s 250 

※EOS 90Dは高画素ではあるもののAF手振れ補正などボディの性能は低いので、SSは低いですが大量に連写してその中から何とかブレのない1枚を選んでいます


Canon EOS-1D X Mark II 840mm ƒ/5.6 1/125s 250 

※こちらは同じコゲラをEOS 1DXで。明らかに解像度は落ちているのがわかると思います。ホウのあたりが解像しきらずにベタっとなってます。

高い機材の扱いは難しくない

最後に、ほかの趣味などとは違い(?)高い道具を使いこなすために高い技術が必要になるわけではありませんので安心して高い機材を使いましょう。

ただ、ロクヨンは大きい&重いのでロクヨン+散策用のズームレンズという組み合わせがベストかと思います。

技術、経験

野鳥撮影では大きくは

  • 野鳥を探す
  • 野鳥に近づく
  • 野鳥を撮影する

という3つの技術と経験が必要になります。

野鳥を探す

野鳥を探すのは大変です。
まずはインターネットで地域のメジャーな探鳥地を日本野鳥の会主催の探鳥会情報などから探してみたり、ブログなどから探してみるのがよいと思います。

そういう場所に通っていると「野鳥のいそうな場所」が大体わかってきます。
そうなってきたらGoogleMap、YAMAPなどでそれらしい場所をみつけて探索を開始します。
身近な場所に意外な珍鳥がいたり、期待した場所に全然いなかったり…冒険が待っています 🙂

おおむね鳴き声でその場所にどんな鳥がいるかはわかりますので、初めからがっつり撮影しようとするのではなく、同じ場所でも時間をかえて何度かぶらぶら散歩してみるのをオススメします。

カワセミなんかは特にですが多くの鳥は同じ場所、同じ枝に同じくらいの時刻にとまる習性がありますので散歩中に飛んでいくのを見かけたら、止まった枝をおぼえておいて次に同じ時間に行くことで出会える確率はかなり高まります。

手っ取り早く現地にいる常連の方々に場所を聞くという手もありますが、そういう知られた場所には多くの人がいます。そして残念ながら野鳥撮影をする方には結構な割合で信じられないほどマナーの悪い方がいます。

  • 常連が陣取って大声で井戸端会議
  • 野鳥を待ちながらタバコを吸う
  • 餌付けをする
  • 枝や木を折ったり自然環境に手を加える
  • 常連者以外を煙たがって追い払う

他にも、鳥が動かないから石を投げる…など、なかなか信じがたい光景を目の当たりにして気分が悪くなりますので、私はそういうのを気にせず、知られていない場所で野鳥を探索する方が性に合っています。
何より知られている場所で知られている鳥を撮ってもそんなにうれしくないですしね 🙂 作業みたいになります

それと野鳥撮影について、野鳥や環境保護のため珍鳥や人気の鳥については場所を公開しないという暗黙のルールがあります。ただこれはほとんどの場合は建前であって、自分たちの活動の場を荒らされたくないというのが本音でしょう。しかしながら気持ちもわかるのでそっとしておいてあげましょう。

あと、大砲で撮る場合は三脚をつかうことも多いと思いますが、通行人や車両の邪魔にならないよう常に気を付け、立ち入り禁止や私有地に入ったりせず心に余裕をもって野鳥撮影を楽しみましょう。

野鳥に近づく

野鳥をみつけたら、次にできるだけ野鳥に近づきたいわけですがこれは至難の業です。
野鳥の写真を撮れる状態というのはほとんど場合は野鳥もこちらに気づいています

なので、その状態からそっと近づいても野鳥は逃げていきます。
感覚的なものですが、大体15m~20mくらいで逃げることが多いように感じます。
(つまり、この距離でシャキっとした写真を撮れる機材が重要になります)。

ただ、逆に野鳥の方から近づいてきてくれる分には5mくらいの距離まで近づいてきてくれることがありますので、鳥を発見したらよほど遠い場合以外はその場で待った方が近くで撮れる確率は高いように思います。

あとよく言われますが、「野鳥に撮らせてもらっている」という感覚でいると、どういう立ち振る舞いをすればよいかがわかってきます。
ブラインドなんかをはる場合も、野鳥にバレていないわけではないので「そんなに気にならないから撮らせてくれている」と思った方がよいです。
そういう配慮をすることで野鳥の方がわかってくれる、そういう感覚があります。

野鳥にいかにして近づくかというのはもう哲学のような感じですのでいろいろやって自分にあった方法を編み出してみてください 😛

野鳥を撮影する

これは比較的時間経過でどうにかなるのですが、初めはせっかく間近に野鳥がとまってくれても、操作がおぼつかずにうまく撮れないことが多いと思います。そして現像してみてがっくりきます。

最近はミラーレスでAF方式が変わって野鳥に1発でピントを合わせるのがとても難しくなりました(像面位相差式)。
一眼レフを使ってた人にとっては故障かと思うくらい合わせづらいです。それでも時代はミラーレスですのでなんとか模索していくしかありませんが…。

逆に鳥瞳AFなどがボディについてきていますので鳥がフレーム内に入ってある程度ピントがあっている状態でのピントは非常に合わせやすくなっています。

動きものについて、カワセミの飛び込みはおそらく初めて見ると「無理でしょこれ」というくらいに速いです。ですが、相応の装備を整えて続けていくとだんだん撮れるようになっていきます。

ここは趣味として最も楽しいところなので頑張ってスキルアップしましょう!

環境

野鳥撮影しやすい環境は非常に整えるのが難しく、かつ非常に大事なものかと思います。

たとえば都会の真ん中に住んでいて車もなく、野鳥撮影をしたいときは土日に機材を抱えて電車で1時間~2時間…という環境だとそもそも撮影できる機会も少なくなり、気力も萎えてきます。ほとんどの人がこのパターンのため、野鳥撮影は仕事をリタイアしてからやるもののようにとらえられています。

私は毎朝6時半~7時くらいに車で15~30分くらいで探鳥地に移動し、現地で1~2時間ほど撮影、また15~30分で帰ってきてそれから仕事というライフスタイルで生活しています。そうする前は徹夜残業、昼に起きてまた残業…といった死にそうな生活をしていましたが、今では相当体調も回復しましたし何より朝の探鳥が楽しくて毎日の生活にハリがあります。

たまの土日に晴れたら野鳥撮影…というサイクルでは土日に1羽も撮れなかったり天気が悪かったりするとストレスになりますが、毎朝1~2時間ずつチャンスがあると、点ではなく線で計画をたてられるようになります。今日はここで撮れなかったから明日はあこに行ってみようとか、撮れなかった場所でも定期的に通って変化を把握しよう…とか、GoogleMapをみてこの辺りにいそうだから絨毯爆撃しよう…とか。

コロナ禍でとくにIT企業はフルリモートワークが多くなりました。これはチャンスだと思いますので、野鳥撮影に本気で取り組むならば、生活環境を野鳥撮影しやすいものにアジャストしてみてはいかがでしょうか?

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