はい、まだ2週間程度ですがRF200-800mm F6.3-9 IS USMをEOS R7で使ってみての中間レビュー。
EOS R7との相性と画質
被写体の画素数
私はEOS R7でRF600mm F4L IS USMやEF600mm F4L IS II USM、EF400mm F4 DO IS II USMなどいろんなレンズを使ってきましたが、今はEF800mm F5.6L IS USMで落ち着いています。
というのも「小鳥に余裕をもって近づける距離」から「小鳥の精細な写真」を撮りたい場合、被写体の画素数を稼がねばならず、どうしてもレンズは800mm(APS-C 1,280mm)という焦点距離が必要と感じているためです。
EOS-1D X mark IIIは約2000万画素という今では低画素機と呼ばれる部類のフルサイズカメラですが、フルサイズ2000万画素とAPS-C 3250万画素では、縦横画素数で倍、総画素数では実に4倍もの差があります。
EOS R7で撮った写真を縦横50%に縮小したものがEOS-1D X mark IIIの写真の解像度と考えてください。
少しわかりにくいですけど上の写真は拡大してもらえたら精細さが全然違うのがわかると思います。
解像力のあるレンズを使っても低画素機では画素数不足で精細に撮ることはできません。
解像力
しかしEOS R7に搭載されているAPS-C 3250万画素という狭い画素ピッチのセンサーで写しとるにはレンズ側に高い解像力が求められます。
RF600mm F4L IS USM + Extender x1.4やEF400mm F4 DO IS II USM + Extender x2、RF800mm F11 IS STMでは解像度が不足しており、EF600mm F4L IS II USM + Extender x1.4もしくはEF800mm F5.6L IS USMクラスの解像力が最低限必要です。
実際のところはEF600mm F4L IS II USM + Extender x1.4もしくはEF800mm F5.6L IS USMクラスでも若干レンズ解像力は足りていないと思うのですが、800mmレンジではこれが最高性能なのと「ほんの少し足りない」くらいなのでこれで撮っています。
「EOS R7で撮って出しで使う」場合には、大体ロクヨンやヨンニッパ、ヨンヨンクラスでマスターレンズ状態で使う必要があるように思いますが、被写体に近づいて大きくフレームに入れねばならなくなりますので撮影難易度は跳ね上がります。
RAW現像による加工
RAW現像による加工が今ほど効果的ではなかった時代には、ほぼ「撮って出し」せねばならなかったのですが、今は昔とはかなり事情が異なっていると考えています。
最近「Canonは暗いレンズばかり」と嘆く方も多いと思うのですが、「レンズが暗くてもAFが効くようになった」のと「高ISOノイズはRAW現像で消せる」のと「被写体画素数が多ければシャープネスはRAW現像で調整できる」という時代となった今、レンズの明るさというのはレンズの性能を評価する上で相対的に価値が下がったと言えます。
さらにF値を確保しようと思うと、レンズは大きく、重く、高価になります。
そこで相対的に価値の下がったF値よりも、大きさや軽さに重点を置いてRFレンズをラインナップしているのは全体としてはCanonは正しい判断をしているように感じます。
趣味の領域ではどうしても「最高」を求められてしまうため、ガチ勢には印象が悪くなってしまっているというのが実際のところかなと思います。
ただ、それでいてお値段上がってるのはイカンですね。
RF200-800mm F6.3-9 IS USMの立ち位置
RF600mm F4L IS USMは中身はEF600mm F4L IS III USMなので、脳内で置き換えてください。
実は解像力的にはRF200-800mm F6.3-9 IS USMってRFレンズの800mmレンジの中では相当良い位置につけてます。
しかもRF600mm F4L IS USM や RF800mm F5.6L IS USMが160~220万円というレンズなのに対して28万円というバーゲンプライス。
コスパでは最高と言えますし、何より解像力はRF800mm F11 IS STMを大きく引き離し、APS-Cで使う分にはRF800mm F5.6L IS USMに肉迫しています。
Canonってこういうヒエラルキーが壊れてしまうようなコスパの良いレンズはあまり出さないのですが、「今回は切羽詰まってるのか相当サービスしたなぁ」と思います。
APS-CセンサーでのMTFチャートの見方
CanonのAPS-Cセンサーは他社よりも少し小さくて 22.3mm x 14.9mmです。
中心からの対角線の長さは13.4mmですのでMTFチャートの横軸は13.4mmまでを見れば四隅までの解像度が大体わかります。
ですが、実際の撮影ではそんな端っこでは撮らないのと野鳥の場合は距離もあるので大体中心から半径5.3mmくらいの範囲がどうかで評価すればいいんじゃないかな?と思ってます(センサー図の青丸、MTFチャートの赤枠)。
大きく見ても上下一杯の7.45mmまでですね。
RF200-800mm F6.3-9 IS USMはチャートを見てもわかる通り、ズームにしては周辺に向けての解像力の低下は7mmくらいまでは頑張ってこらえているので、かなり優秀と言えます。
比較するとわかりますがRF800mm F11 IS STMは7mm地点でも落ち幅がかなり大きいですよね。
APS-Cはレンズ解像力が必要ではあるんですが「レンズのおいしいところをだけを使える」というのはこういう意味です。
EOS R7との相性
これらを踏まえたうえで、EOS R7との相性ですが「意外にもかなり良い」というのが今現在の所感です。
もちろんレンズの解像力はかなり不足していますのであまい写真になるんですが、800mm(35mm換算1,280mm)ですので被写体画素数を確保できるため、RAW加工で救える範囲がかなり広いです。
またF9という暗さは撮影時のEVを大体-2~-3で撮ればISO1600未満に落ち着くことがほとんどです。
ですのでRAW現像でノイズ除去や加工を行うという前提ならば、「かなり良い」という事になるかなと思います。
多分センサー的に「撮って出し」するならばEOS R3やR6 mark II、R8といったような低画素なフルサイズセンサーが適合なのですが、そこをあえて画素数重視でEOS R7で撮ってRAW加工で救う使い方ですね。
小鳥のとまりもの撮影は私の場合は
機材 | 撮影可能距離 |
EOS R7 + EF800mm F5.6L IS USM | 20m~30m (RAW加工で30mくらいまで可) |
EOS R7 + RF200-800mm F6.3-9 IS USM | 15m~20m (RAW加工前提) |
EOS-1D X mark III + EF800mm F5.6L IS USM | 10m~15m (RAW加工は画素数が少なくて厳しい) |
という感じですかね…?~25mまで行けると最高でしたが流石にそれは欲張りすぎでした。
もちろんRAW加工は必須ですのでそれが信条に反する人や、面倒な人や、やり方がわからない人は低画素なフルサイズで使った方が良いかと思います。
AFについて
これについてはまだ検証中なのですが、遅いという感覚は今のところありません。
改めてEF800mm F5.6L IS USMなどでAFすると確かに速いなとは思いますが、EOS Rシリーズではボディが的確に被写体を捉えることの方がはるかに重要です。
簡単に言うとEOS R7が背景を捉えてしまうのでカワセミまだ撮れてません 😛
これに関してはまた近日中(多分)に撮って評価したいと思います。
重量、サイズについて
サイズはともかく、重量については800mmで2kgというのはやはり軽いなと思います。
Nikonの800mm F6.3でも2.4kgほどありますので更に少し軽いですね。
ちょっと問題があってGitzoのジンバル雲台はこのくらい機材が軽いとスムーズに動かせない(単純にハチゴローや1DXをずっとのっけてたせいで壊れただけかも)ので、いまいちカワセミなどでは使えないという点。
ザハトラーのFSB8 mkIIはテンション調整がかなり細かくできますので、EOS R7 + RF200-800mm F6.3-9 IS USMという軽い構成でもスムーズに操作できています。
あと初めは手持ちはちょっと厳しいかな?と思いましたが手になじんできて問題なく撮影できるようになってきました。
ズームレンズであること
私は基本的には800mmでしか使わないのですが、これだけ長射程になってくると500mm~600mmくらいにした方が良い場合があります。
例えばカワセミを撮るときにあまりに近くにやってきた場合などは、焦点距離を少し短くしても十二分に解像しますし撮りやすかったりします。
嫁が鳥以外をちょくちょく撮るときに800mmは長すぎるので200mmで撮ってるのを見ると、確かに鳥以外の動物やオブジェを撮る際には200mmも有用なんだなと感じます。
また、APS-C 800mmというのは被写体を見失う長さですので、初心者の方は500mmくらいでレンズを振って被写体をとらえたら800mmに…という使い方も良いかもしれませんね。
まとめ
まだ使い始めて2週間の評価。
RF200-800mm F6.3-9 IS USMは、RAW現像時のノイズ除去やシャープネスその他加工があまり効果的ではなかった時代では「それなりのレンズ」だったと思うのですが、AIも進化してRAW現像が非常に効果的な今の時代では「相当イケてるレンズ」だと思います。
距離15mくらいで撮れた場合はRAW加工すればハチゴローで撮ったものと比べても遜色ありませんね。
それでいてRFレンズですのでEFレンズでは受けられない恩恵が多々ありますし、今後EOS R5 mark IIやEOS R1が発売されればより使い勝手が向上する可能性があります。
ただ、私はEOS R7を好んで使っていますが一般的にはEOS R7は撮りにくくてフルサイズの方が綺麗だといわれていますし、RF200-800mm F6.3-9 IS USMも人によって評価は大きくわかれるのではないかなと思ってます。
撮って出しの人には画質は少し物足りないでしょうし、EVを下げて撮らない人にはF値は厳しく感じられると思います。
また、どうしても暗所は潰れやすいのでシビアなケースでは思った通りの画質は得られません。
ただ、少なくとも過去のズームレンズの中では野鳥撮影では最高のレンズだと思いますし、EOS R7 + RF200-800mm F6.3-9 IS USMというのは合わせて45万円という、これから野鳥撮影を始める方にはかなり入りやすい機材のように思います。
さて…では頑張ってカワセミ撮ってみます 😛
※追記2023/12/24 ようやく撮れたのでよろしければこちらもどうぞ😺