はい、EOS R7も気づけばもう1年と3ヶ月ほど使っています。
このところ、遠距離の被写体を撮影する機会が多かったのでR7での遠距離撮影についていくつか。
EOS R7での遠距離撮影をするメリット
高解像度 = より遠距離から撮影できる
EOS R7で野鳥撮影をする理由で最も大きいのはやはり「高解像度」であるという点です。
CanonのAPS-CはSONYやNikonと違って35mm換算で焦点距離x1.6倍な上に3250万画素という画素数ですので、解像力のあるレンズで撮影すれば今現在では主要他社の機材よりも非常に高い解像度で撮影が可能です。
この写真は60m超の距離で撮影しています。
ブッポウソウは比較的大きな鳥とはいえ、この距離で羽の質感までというのはなかなか難しいですね。
画素ピッチ的にはOM SYSTEMのマイクロフォーサーズと同じですが、OM SYSTEMにはロクヨンやハチゴローといったような大口径の大砲単焦点はありませんので、より高精細に撮りたい場合はEOS R7が有利です。
これはFuji Firmも同様で、X-H2もレンズが150-600mmズームしかないのでどうしても厳しいです。
私の場合は野鳥写真では解像度を重視しますので、画素ピッチが狭い方が良いですが狭すぎるとISO耐性やブレ、色乗りなどが許容できないものとなりますので、F5.6レンズでISO 1600くらいまで許容できるEOS R7が今のところバランスが良いですね。
EV-2、SS1/200でかなり暗いシーンでもISO1600でおさまりますので。
もちろん他のボディには別の良いところがありますので、EOS R7はこの1点に特化している尖った機種だと思ってください。
撮影しやすい機材は他にもあるけど、無二の解像力があるからEOS R7で撮れる方法を模索しちゃうね。
ただ、それでもやはりEOS R7で撮っていれば…というのが後悔になっちゃうんだよね…。
AF性能
カワセミ撮影ではEOS R7のAF性能はかなり厳しいものがあるのですが、遠距離の動体撮影では優秀と言って良いのではないかと思います。
「遠距離だとトラッキングAFがなかなかキまらないんだけど…」というのはありますが、ここでのAF性能は主に「トラッキングAFも動物検出もOFFにしたAF」ですね。
CanonのセンサーはデュアルピクセルCMOSで、レンズで多少ばらつきはあるものの、ほぼセンサーのどこでもピントを合わせることができるのも大きいですね。
また遠距離でのAFにおいては焦点距離35mm換算 x1.6というのは非常に頼もしい味方で、被写体が大きくフレームに入ることでAF精度が向上するほか、テレコンを着ける必要がないことによってAF機能や解像力劣化がありませんので、その点においても非常に優秀です。
電子シャッター30コマ/秒で、RFレンズやEF II型/III型レンズだとAF追従してくれるっていうのはトラッキングAFというよりこっちのAFのことだよね。
トラッキングAFは過敏にすると追従性能が損なわれるから、アルゴリズムレベルでウェイトがある感じがするしね。
何度かテストしたけど、トラッキングAFは急に飛び立った小鳥なんかには即座に追従してくれないけど、トラッキングAFと動物検出がOFFだと即座に反応してくれてたしね。
MF性能
MF性能ってどういうことよ?って話ですが…これはミラーレス全般の特徴です。
ファインダー像を拡大できるのがとにかく強い。
一眼レフではどうしてもMFで野鳥の羽毛が解像するくらいまでピントを合わせるのは難しいのですが、ミラーレスでは拡大してピントを合わせられますのでほぼ問題ありません。
実際のところ、三脚をつかって撮る分には動体撮影以外だとMFで撮ってもそんな大変ではありませんね。
普段はAFで、ピントが合わないときだけ即座に拡大MFという使い方がGoodですね。
まだまだ改良の余地はあるけど、どうせCanonだし当分改善しないんだろうねぇ。
今はAF性能がボディ性能の比較で最も目を引く要素だから、MFを撮りやすくするメリットもないしね。
EOS R7での遠距離撮影のコツ
機材:三脚、照準器
EOS R7 + 大砲で遠距離の被写体を撮影する場合は、三脚を使う事をお勧めします。
どうしても機材を支えながらカメラやレンズ操作を行うのは難しいのと、やはりできるだけSSを下げてブレなく撮れるようにしていた方が無難です。
照準器については人それぞれ…ですが、CanonのAPS-Cの場合は800mmレンズを使うと35mm換算1280mm相当になりますので慣れるまで、または慣れていても一発でフレームに被写体を捉えるのは大変です。
加えてミラーレスの罠(デフォーカスからの復帰問題)を回避するには被写体がボケて見えていない場合でも、確実に被写体がフレーム内に入っている状態を確保してピントリングを回す必要があるため、私はほとんどの場合で照準器を使って素早く確実にフレーミングできるようにしています。
EOS R7はブレが天敵なので、なるべく三脚での撮影をオススメします。
800mmレンジの超望遠でSSを落とそうと思うとどうしても必要になるね。
RFレンズの大砲を持ってる人は手持ちでOKなので、そのあたりは重量と手振れ補正効果次第で。
遠距離のとまりもの撮影
AF-OFF機能と拡大機能を押しやすいボタンで
私はEOS R7のとまりもの撮影では「AF-OFF」と、「拡大」を多用します。
ですので「AF-ON」ボタンに「AF-OFF」機能を、「M-Fn」ボタンに「拡大」機能を割り当てています。
これで「トラッキングAFがうまく決まらない場合に強制的にAFをOFF」にして「MFで拡大してピントを合わせて撮影」できます。
何故親指AFにしないの?って話ですが、EOS R7では圧倒的にAFをONの状態で使う事が多いのと、動体撮影では親指AFは都合が悪いからです。
親指AFはワンショットAFで撮ってた時の過去の遺産な気がします。
もちろん、EOS R7で撮るときはサーボAFです。
AFフレームの表示について
久しぶりにうちのアメショ様に協力していただきました。
この動画で大事なのはAFフレームの表示です。
トラッキングAFでは、
- 灰色の四角 … AF設定だがAF稼働されていない状態
- 青色の四角 … AFが稼働されていて何かに合焦している状態
- 赤色の四角 … AFが稼働されているものの何にも合焦できなかった状態
- 白色の四角 … 被写体が検出されている状態
- 白色の四角(鉤括弧) … 瞳が検出されている状態
- 四角が表示されない … MF設定
のような表示になります。
CanonAFの特徴で、AFを稼働させなくてもトラッキングAF設定の場合は常に被写体検出が行われています。
(ただAFを稼働させている時よりは頻度は低いようですが)
ですので、特にAF稼働状態じゃなくてもレンズを被写体に向けると何かしら反応があります。
AFを稼働させても大丈夫な合図
EOS R5以降のシリーズ全般でつらいのは
- AFを稼働
- よくわからないものを掴んで被写体から大きくピントが外れる
- AFを停止してピントリングを回して被写体近くまでピントを移動させる
- AFを稼働
- よくわからないものを掴んで被写体から大きくピントが外れる
- ….以降無限ループ
という状態に陥る事です。
これに陥ると目の前に鳥がいるのにいつまでもシャッターを切れず、ミラーレスの罠にハマってしまいます。
動画中のこのコマではAFを発動してなくても目のあたりに白い四角鉤枠が表示されているのがわかります。
この状態は「今AFを稼働させれば瞳AFが効くという合図」です。
実際にAF-OFF機能を解除してAFがONになると、白い四角い枠が表示されていた部分にAF合焦&追尾してくれます。
これは瞳AFに限らず、被写体検出ができている場合には被写体を囲むように白い四角が表示されます。
つまり?
完全にピント抜けを避けるのは難しいのですが、
1. とりあえず被写体に対してトラッキングAFを稼働させる。
2a. トラッキングAFがきけばそのままシャッターを切る。
2b. トラッキングAFがきかなければAF-OFF機能を使ってMFできるようにする。
3. 拡大してMFでピントを合わせてシャッターを切る
(拡大中は被写体の検出の四角は表示されないので注意)。
4a. 拡大が解除されて被写体検出の四角が表示されていればAFを稼働させて撮る
4b. 被写体検出の四角が表示されていなければそのままMFで撮る
こういう感じで操作すると、鳥が目の前にいるのにまったくシャッターを切れないという事故は概ね防げます。
余談
トラッキングAFを使う場合は、起点になるAFエリアはある程度大きい方が掴んでくれる可能性が高くなります。
逆にスポット1点から開始するとうまくつかめないことが多いですね。
次で説明するフレキシブルゾーンAFとAFエリアダイレクト選択を使って、場合に応じてAFエリアを変更しながら撮影するとこの症状は回避しやすいです。
このベニマシコはスポットでは枝にピントが合ったりしてなかなか安定しなかったので、少し大き目のゾーンで被写体全体を囲むようにしてトラッキングAFして撮っています。
EOS R7撮りにくいという方が多いけど、実際その通りです。
使いこなすのは大変だけど、だんだん癖になってくるよね。
最近は少し余裕が出てきてこの難しさ?を楽しめるようになってきたかな。
遠距離の動体撮影
フレキシブルゾーンとAFエリアダイレクト選択機能
EOS Rシリーズの特徴として、フレキシブルゾーンでAFエリアをかなり細かく設定できるというものがあります。
EOS R7の場合はフレキシブルゾーンを3つ登録できますので、徐々に大きさが大きくなるように設定してます。
そして、AFエリアの限定で使用しないAFエリアはチェックを外します。
そしてこれとAFエリアダイレクト選択機能をつかって、被写体のサイズに合わせて素早くAFエリアの変更を行います。
私はこの切り換えボタンをAFフレームボタンに割り当てています。
上の設定を行うと、この動画のように撮影中に素早くAFエリアを変更できるようになります。
この設定はやっている方が多いと思いますが、オススメです。
撮影中にAFフレームのサイズを調整
EOS R7での動体撮影においては動物検出やトラッキングAFはまだまだ精度が悪くスピードが遅いため、これまで試した感じでは「トラッキングAFなし」「動物検出なし」で一眼レフと似たような感じで撮った方がベターな気がしています。
そのため、一眼レフ同様で「AFフレームを被写体に合わせて狭くする」というのは有効です。
この写真は一眼レフのEOS-1D X mark IIIでの撮影ですが、通常の領域AFでは広すぎるため丁度この被写体にぴったりのゾーンAFを選択して撮影しています。
ファインダーで撮影する
どれだけ速い鳥でも遠距離の場合は遅く見えますので、基本的にはファインダー撮影で十分です。
照準器のみで撮る場合はどうしても距離による視差が大きいので注意が必要です。
本当に遠距離の場合って照準の基準をどこに置くかが難しいんですよね。
上のハヤブサは見事に照準器の視差でやらかしました…。
私は照準器である程度あたりをつけて視線をそのままファインダーに切り替える感じで、ファインダーで撮影しています。
あとEOS R7のメカシャッターはブラックアウト時間が非常に長いので、許される状況ならば電子シャッターの方が良いですね。
ピントが外れたらすぐシャッターボタンを押しなおす
被写体を捉え続けることができるならばシャッターは切りっぱなしで良いのですが、どうしても外れてしまう事がありますので外れた場合はすぐにシャッターボタンを押しなおしてAFを再稼働させます。
ミラーレスは一度ピントが抜けてしまうと自動的に復活…はなかなかしてくれませんので注意が必要です。
ずっとシャッターを押しっぱなしでは、最悪の場合すべてのショットが失敗…という事もあり得ます。
このミサゴもちょくちょくシャッターボタンを押しなおしつつピントのヌケの対処をしながら撮っています。
そういう意味でも照準器だけではなくファインダーで撮った方が良いですね。
私の感覚では、50m超のような遠距離で動体撮影をする場合はEOS R7はとても優秀。
APS-Cのx1.6効果もあってピントも合いやすい感覚あるね。
ローリングシャッターの歪みや、デフォーカスなんかも気にしなくて良い場合が多いね。
まとめ
このところ遠距離での撮影が多かったのでなんとなく思いつくことを書いてみました。
EOS R7は決して撮影しやすいボディではないのですが、EOS R7 + 超望遠レンズでしか撮れない写真がありますので何とかして歩留まりを高めて撮影する方法を模索して撮っている感じです。
EOS R7 mark IIでは是非改善してほしい点が山のようにありますが、当分先でしょうね…。
大体の方は、トラッキングAFでピントを合わせようとして「ピントが合わない」と感じてしまうようですが、私の場合はもうトラッキングAFは条件の良い状態で使えるボーナス機能のように考えています。
それもどうかとは思うのですがEOS R3やR6II、R8などのAFが良いと言われても、ここまで高精細には撮れないので仕方ないですね 😛
ここで紹介した内容は誰にでも当てはまるものではありませんし、参考程度にしていただけたら。
EOS R7でうまく撮れずに悩んでいる人は多いみたいだね。
実際、必要なレンズも撮り方も少なくとも初心者向けではないよね。
そろそろEOS R1の発表がきそうだけど、EOS R7を完全に置き換えられる性能である事に期待。