はい…今日はセンサーに合ったレンズ、レンズにあったセンサーの選び方について少し。
ボディ(センサー)の解像度
写真の解像度
まず、写真の解像度について。
画面や画像を表示、印刷する際の精細さを表す尺度のことを解像度といいます。
デジタルカメラの解像度は「2,000万画素」のようにピクセル(=画素)の総数で解像度を表します。
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野鳥撮影ではおそらくほとんどの方はトリミング前提ですので、解像度の意味合いが通常と異なります。
トリミングしなかった場合はセンサーの画素数=解像度となりますが、トリミング前提の場合は「トリミング後の写真の画素数」が解像度にあたることになります。
トリミング後に残った画素数が大事ということになりますので、フルサイズやAPS-Cというようなセンサーサイズによる区別はあまり意味がありません。
例えばEOS R5は4500万画素、EOS R7は3250万画素で画素数はR5の方が多いのですが、R7の方はAPS-Cですので、同じ距離から撮影した場合にはEOS R7の方が被写体の画素数は圧倒的に多くなり、解像度が高いという事になります。
野鳥撮影では「トリミング前提」「鳥には自由に近づけない」という点が他の撮影とは大きく違うのでこういうことに。
今の時代は印刷して紙で~という人の方が少数派ですし、私の場合はかなりクローズアップするのとPCなどで拡大してみますので、どこまで解像度が高くても無駄はないという事情もあります 😛
ほとんどの場合で「解像度が高い=遠くから撮れる」という事にもなるから、解像度はできるだけ欲しいなぁ。
鳥によって近づける距離は違うけど、小鳥を距離30mくらいで撮れればかなり快適だね。
野鳥を撮ってる感じだと~20mは鳥がまだまだ逃げる距離、30mだと逃げられない事が多いかな。
センサーの画素ピッチ
画質については画素ピッチ(画素あたりの受光面積でも可)による違いと考えて良いのではないかと思います。
画素ピッチが広いほど、解像度が低く、高感度に強く、色乗りが良く、ブレに強いという感じですね。
ただ画素ピッチが狭い場合に最も問題となるのはレンズの解像力で、画素ピッチが狭いのにレンズの解像力が低いと、解像度が低く、高感度に弱く、色乗りが悪く、ブレに弱いという最悪の結果になります。
EOS R7で綺麗に撮れない場合は、レンズ解像力が足りない場合とRAW現像で適切な処理をしていない場合がほとんどじゃないかな?と思います。
センサーの解像度とレンズの解像力のバランスが重要ですので気を付けましょう。
上の写真はEOS R5 + RF100-500mm F4.5-7.1L IS USMで距離15m~20mですが、十分な画質かなと思います。
R5はR7より色乗りが良い…というのはなんとなくわかりますね。ボケとかはF7.1ですので酷いもんですが 😛
Canonは、今はどうもフルサイズ4500万画素が最もバランスが良いと考えているぽいね。
実際、EOS R5で撮った写真はなんか綺麗な気がするね。
EOS R1も4500万画素という噂もあるし気になるなぁ。
レンズの解像力
F値による解像度限界
少しネットを徘徊していて、こういう記事を見つけました。
主にRF800mm F11 IS STMの話が載っているのですが、この中でF値による解像限界のチャートが載っています。
このグラフをみてわかる通り、F11のレンズ…RF600mm F11 IS STM、RF800mm F11 IS STMに関しては、MTFを見るまでもなく、そもそも回折の影響でフルサイズ2700万画素までしか解像させることはできないそうです。
また縦軸は有効画素数みたいなので、CMOSのベイヤー配列だとセンサーの画素数よりも少な目で考えた方が良いらしいです。
諸説ありますが、4500万画素だと75%くらいで3300万画素くらいで考えておくとよいとか。
EOS R5は4500万画素なので大体F8~F9、R7は8300万画素(35mm換算)なのでF6.3~F7よりも明るいレンズが少なくとも必要になるという意味合いです。
レンズの明るさが足りなければ、そもそも解像力は得られないということね。
RFのF11レンズは~2700万画素までのボディで使った方が良さそうだな。
RFレンズはF値の高いものが多いから、テレコン使用時はちょっと気を付けないとね。
MTFチャート
幾何光学的MTFと波動光学的MTF
こちらで書きましたが、まずメイカーによって表記が違いますので注意してください。
CanonとSONYやNikonのMTFチャートを比べるのは無意味です。
Canonは波動光学的MTFで公開してくれていて比較しやすいので、そこは非常にありがたいですね。
チャートで確認すること
チャートでは主に以下の点を確認します
- 使用するボディのセンサーに適合した解像力を持っているか?
- テレコンをつけて使用する場合はテレコンありのチャートはセンサーに適合しているか?
- 他の候補レンズと比較してどうか?
候補になるレンズのMTFチャートをネットから集めてPC上で並べて比較するのが良いのではないかと思います。
テレコンありのMTFチャートは、Canonの場合はテレコン側のページに貼られている事が多いです。
昔のレンズはたまに幾何光学的MTFが貼られている場合があるので、その辺は注意。
チャート内で見るべき範囲
フルサイズの場合はセンサーが36×24mm、対角線は約43.27mmで中心からの距離なため半分に割って21.6mm、つまりMTFチャートの一番右端がセンサー四隅の解像力となります。
APS-Cの場合はCanonは他社よりも少しセンサーが小さくて22.3×14.9mm、対角線は約26.8mm、つまりMTFチャートの横軸13.4mmのあたりがセンサー四隅の解像力となります。
いくつかのレンズの例を貼りました。
横軸13.4mmあたりに赤線を入れましたが、横軸の0からこの赤線までがAPS-Cの場合に見るべき範囲となります。
解像力
30本/mmのカーブ(水色)が1に近いほど高解像なレンズとなります。
私の場合は上の図のように、APS-Cの範囲で30本/mmの上限と下限がどれだけで収まっているかを基準にしています。
以下は完全に私の感覚的な値ですが、
画素ピッチ | 30本/mmの値 |
3.39㎛ ( EOS R7 ) | 0.85~0.80以上くらい、それより少し低くてもRAW現像でなんとか |
4.36㎛( EOS R5 ) | 0.80~0.75以上くらい、それより少し低くてもRAW現像でなんとか |
5.96㎛( EOS R3など) | 0.75~くらい?(あまり使ったことはないですがRF800mm F11 IS STMも多分可) |
こんなイメージでいます。
焦点距離と解像力
これは写真の解像力に近い話ですが、焦点距離が長い方がMTFチャートの値が低くても有利な場合があります。
例えば、ハチゴロー、ロクヨン(III型)、ヨンニッパ(III型)のMTFを見てみます。
ぱっと見るとEF400mm F2.8L IS III USMが一番綺麗じゃん…となるわけですが、「400mmで600mmや800mmと同じサイズで被写体を撮影できた場合」…つまり「被写体に近づいて撮影できた場合」です。
例えば撮りたい被写体が焦点距離400mmで足りる場合、EF400mm F2.8L IS III USMはこの中で最高のレンズと言えますが、600mmが必要な場合はロクヨンが、800mmが必要な場合はハチゴローが最も優秀なレンズとなります。
Extenderをつけた場合のMTFも見ておくと、400mm F2.8を560mm F4として使う場合にどれだけ解像力が落ちるか、600mm F4を840mm F5.6で使う場合にどれだけ解像力が落ちるかがよくわかります。
ですので、必要な焦点距離のレンズを使うのが基本で、Extenderは非常用と考えておいた方が良いです。
ただEF600mm F4L IS II USMだけはちょっとおかしいレンズで、
テレコンをつけて 840mm F5.6 としてもハチゴローのMTFチャートと競っているという鬼性能。
いまでもメインレンズとして愛用されてる方が非常に多い銘玉です。
残念ながら2025/02で修理対応期間が終わりますので、これから購入する人はちょっと注意ですが。
ロクヨンII型とハチゴローについては、前にかなり悩んだので興味ある方は参考にしてください 🙂
Canonの場合は波動光学的MTFチャートなこともあって安心して比較できるね。
RFレンズと見比べてみてほしいけど、EFレンズは光学性能が高いね。
修理対応が2029年までのものが多いから、EFレンズは今が旬かなという気がするね。
レンズの口径と材質
結局のところ大手メイカーのレンズだとレンズのタイプ、口径と材質、レンズ枚数でほぼレンズ性能が決まります。
また、大きさについては
F値 = 焦点距離 ÷ 有効口径
ですので、同じ焦点距離でF値を小さくしようと思うと、口径を大きくするしかないから大型化していく…ということですね。
レンズ | 最大径 × 長さ | 特殊レンズ | 30本/mm範囲 |
EF400mm F2.8L IS III USM | Φ163 × 343mm | 蛍石レンズx2、スーパーUDレンズ | 0.91~0.89 |
EF400mm F4 DO IS II USM | φ128 × 232.7mm | DOレンズ、UDレンズ | 0.90~0.86 |
EF600mm F4L IS III USM | φ168 × 448mm | 蛍石レンズx2、スーパーUDレンズ | 0.90~0.78 |
EF800mm F5.6L IS USM | φ163 × 461mm | 蛍石レンズx2、スーパーUDレンズ、UDレンズ | 0.87~0.78 |
EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM | φ94 × 193mm | スーパーUDレンズ、蛍石レンズ | 0.86~0.72 |
RF100-500mm F4.5-7.1 L IS USM | φ93.8 × 207.6mm | スーパーUDレンズ、UDレンズx6 | 0.82~0.71 |
RF800mm F11 IS STM | φ101.6 × 351.8mm | DOレンズ | 0.76~0.59 |
また、ズームの場合はレンズ枚数が多くなってしまって相対的に解像力が落ちます。
特に周辺の解像力低下が激しく、テレコン装着時の解像力の落ち込みも大きい傾向があります。
また材質としては大きな蛍石が入っているレンズはテレコンをつけてもかなり健闘している感覚があります。
レンズ構成を見るとわかりますが、ハチゴローやロクヨンII型は前玉の方に大きな蛍石が2枚入っていて、ロクヨンIII型は真ん中に小さい蛍石が2枚入っています。
マスターレンズ状態の解像力はロクヨンIII型も非常に高いのですが、テレコンをつけた時の落ち込みが激しいのでテレコンを入れた時の解像力の差はこの辺りで出ているのかな?という感じはしますね。
II型はロクヨンに限らずサンニッパやヨンニッパ、ゴーヨンなども前玉に大きな蛍石が2枚入っていて全体的に良好です。
とても重いですが。
EF600mm F4L IS III USMは現役レンズですし、III型はRFレンズの思想に近い…ということでしょうね。
RFレンズは小型軽量化をコンセプトとしてる感じだね。
小型軽量化で画質も向上してれば文句なしだったんだけどね。
EF800mm F5.6やEF600mm F4 II型の様に蛍石をふんだんに使ったレンズは、重いからもう出ないんだろうなぁ。
センサーとレンズの組み合わせ
ここまではセンサーとレンズの話を書きましたが、まとめると上のグラフのような感じかなと思います。
お値段の高い装備を使うほど良い…という事なら悩む点はあまりないのですが、やはり重量やサイズ、解像度、用途などでバランスよく機材を選択する必要があります。
「散策は薄暗いことが多いから画素ピッチが狭いと厳しい」というのはもちろんあるのですが、近年はAIによるノイズ除去であまり気にならなくなりました。
ただJPEG撮って出しは論外で、できるだけRAW 14bitで撮影しましょう。
やはり万能機材というモノはないのでボディ2種、レンズ2本の組み合わせで対応するのが良いように思います。
私は今は散策用のレンズがなくて気合でハチゴローで運用していますが、なかなか厳しいです 😛
最近みかけた良レンズ
RF100-300mm F2.8L IS USMが発売されたのと、RF200-500mm F4L IS USMが近々発表になるという事でこのレンズがちょくちょく中古で出てきています。
Extenderなし(400mm F4) と内蔵Extender x1.4(560mm F5.6)が優秀ですし、野鳥以外で200mmも使いたい方には良いですね。
こんな大きなレンズを運動会に持っていけるのかは謎ですが。
400mm(560mm)しか使わないならEF500mm F4L IS II USMで良い気はします。
現役機材なので修理もまだまだできますし、EOS Rシリーズの最高連写速度対応で、AFも非常に高速なレンズです。
140万円出して買う気はしないですが、マップカメラで中古がでると良品でも60~70万円くらいで買えるのでオススメ。
何かしら参考にしていただければ。
P.S. Googleの広告が何もしてなくてもクリック違反とかうるさいので、当面OFFにします 😛