前回はEOS R7の宣伝をしたので、今回はもう1台の愛機EOS-1D X mark IIIについて。
EOS-1D X mark IIIの長所
1. 一眼レフ最後のフラグシップモデル
キヤノンの御手洗冨士夫会長兼社長CEO(最高経営責任者)は読売新聞のインタビューに応じ、従来のデジタル一眼レフカメラの旗艦モデルの開発や生産を数年後に終了して、「ミラーレスカメラに一本化する」と明らかにした。
「60万円超」高級ミラーレス、大手3社が続々投入…想定超える予約も【読売新聞】 デジタルカメラ市場でミラーレス一眼カメラの人気が高まっている。初心者向けの入門機として発売されたが、高機能化が進んだこともあり、幅広い層に浸透しつつある。大手3社はプロカメラマンらの使用も想定した高級機種を投入しており
Canonの社長が明言していますが、EOS-1D X mark IIIは一眼レフ最後のフラグシップ機となります。
つまり、Canonからはこれ以上の性能をもった一眼レフ機はもう発売されません 😛
Canon一眼レフ機で最高性能、これがまずはEOS-1D X mark IIIの動かしようのない長所となります。
EOS-1D X mark IIIで撮れなければ、他のCanonの一眼レフを使ってもまず撮れないというハイエンドであることが大事です。
写真を本気趣味にするなら初めから最高のボディを購入した方が良いとよく言いますが、その通りかなと。
上がもうないなら自分のスキルを磨くしかないですしね。
数年前までのメインストリームの頂点に位置するボディが使いにくいわけもなく。
2. EFレンズの性能を最大限に引き出せる
RFレンズ、特に大砲や焦点距離の長いものは非常に高価ですので、主要EFレンズの修理期間が終わる2029年くらいまでは、まだまだEFレンズを使っていこうと考えている方は多いと思います。
EOS RシリーズはマウントアダプターでEFレンズを使う事はできますが、EFレンズではEOS Rシリーズの性能を最大限引き出すことはできませんし、逆にEOS RシリーズではEFレンズの性能を最大限に引き出すこともできません。
私が愛用しているEF800mm F5.6L IS USMなどは特に顕著ですが、EOS Rシリーズでは連写速度もでませんし、フォーカスプリセットなど使えない機能もありますし、原始的なAF速度もEOS-1D X mark IIIで使った場合と比べると遅く感じます。
EFレンズはRFレンズよりも重くてサイズは大きいものの、大量に市場に出回っており、RFレンズより安価にも関わらず解像力が高かったり、明るかったりするものが多数あります。
安価で高性能なEFレンズを最大限に使える、これがEOS-1D X mark IIIの大きな長所となります。
単焦点レンズの光学的な性能はEFレンズ時代に既に限界まできている感があるので、EFレンズの大砲は一眼レフでもミラーレスでも壊れるまで使えますね。
RFレンズは軽量化やサイズダウンの傾向があるので、画質はEFレンズの方が良いものも多いですしね。
そして何より安い。
EFレンズは、まだ十分に修理対応期間が残っている今がねらい目ですね。
3. プロ機
今現在(2023/05/31)ではEOS Rシリーズにプロ機はなく、発表もされていません。
また将来のR1との差別化の為か、EOS R3は性能は高いものの、堅牢性や可用性はEOS-1D X mark IIIに劣ります。
CF ExpressBが1スロットだったり、少しボディのビルドクォリティが心もとなかったり…。
マルチアクセサリシューもちょっと防水的に危ないですし、ローパスフィルタもGDではないという手心?も加えられています。
EOS R1はすべての面でEOS-1D X mark IIIを越えてくると思われますが、普通は買えるような価格ではありませんので、現行のプロ機ボディをこの価格で使えるというのは大きな長所と思います。
EOS-1D X mark IIIを使っている時の安心感は抜群ですね。
EOS R7で撮ってると撮影中にいろんな不安が頭によぎるしね。
山で木々の間を歩いてると、レンズを優先的に守ってボディはおざなりになりがちだけど、多少ぶつけようが全く不安がないし雨や雪が降ってきても気にならないし良いよね。
4. 一眼レフ最高峰のAFと連写性能
16コマ/秒と聞くと、ミラーレスの30コマ/秒や40コマ/秒と比べて遅く感じるかもしれませんが、現行ではローリングシャッターの歪みを気にせず14bit RAWで安定して撮れるコマ数としては、EOS R3に次ぐ速さです。
カワセミ撮影ではローリングシャッターの歪みはモロに影響しますので、EOS R7はもちろんEOS R5、R6 markII、R8などでも電子シャッターでは厳しいものがあります。
AF性能もミラーレスのようなトラッキングAFではありませんが性能は非常に高く、私はカワセミ撮影ではCanon機の中では未だに最も撮りやすいボディと思っています。
何気なくカワセミの飛翔を撮ってるけど、ミラーレスはEOS R3以外の電子シャッターだと本体と水面に写る姿に違いがあることが多いね。
後から気づいて愕然とすることがあるな。
EOS R7はメカシャッター15コマ/秒だけど、少し連写スピードは安定しないね。
5. 悪条件に強い
下の黒いのがRAW撮って出し。
かなり暗かった上にEVも下げてたので「これは流石に無理」と思っていたのですが…現像してみてびっくりです。
暗く、背景がうるさい中、ジャスピンでクローズアップしても十分なクォリティ。
画質にもビックリしましたが、AF効いてるのはすごいですね。
この悪条件でも結果が残せるのかと、かなり感動しました。
もちろん全ショット現像前は真っ黒です。
環境によりますが、カワセミの飛び込みは悪環境になる事が多いため、とても頼もしいですね。
プロ機とほかのカメラとの違いは、やはり環境によらず結果を残せるかどうか。
今の時代、条件が良ければ撮れるのは当然だしね。
毎日撮影できなくて撮影機会の少ない現役勤労者にこそ…と思いますね。
EOS-1D X mark IIIの短所
1. 画素数が少ない
野鳥撮影において、EOS-1D X mark IIIはこれが致命的です。
解像力が不足していてトリミング耐性が低いので、焦点距離の長いレンズを使用する必要があります。
「フルサイズで野鳥撮影するには800mmのレンズが必要」とよく言われますが、まさにそれです。
EOS R7はフルサイズだと8300万画素くらいの解像力がありますので、比較すると画素数1/4くらいで撮っている感覚ですね。
EOS-1D X mark III + 800mm ならば EOS R7 + 400mm で撮ってるような解像力です。
やはりフルサイズは野鳥撮影では4000〜5000万画素欲しくなります。
そして高速な動体撮影で使用してますので、テレコンはなるべく挟みたくないというAFスピード面の事情もあります。
ただ、近年はAIによるアップスケーリングで1段ほど解像度を向上させることができますので、4000万画素で撮っているのと変わらないくらいの解像感でRAW現像できるようになりました。
EOS-1D X mark IIIやEOS R3が一気に野鳥撮影で実用的になったと言えます。
ただ、フルサイズ2000万画素という広い画素ピッチが高速な動体撮影のブレを抑えている可能性は高いから、4000万画素あると逆にブレ問題が起きるかもしれないね。
EOS-1D X mark IIIは、EOS R7で撮った時のようなブレが一切ないもんな。
AIスケーリングでまさか解像度がこんなに向上するとは思っていなかったから、案外このバランスがベストなのかもしれないね。
2. 撮影結果が見づらい
ミラーレスを使っているとファインダーで撮影結果を確認できるわけですが、一眼レフは当然そんなことはできません。
ぼちぼち老眼が顕著にでてきているので、液晶画面を見るときには眼鏡を跳ね上げたりしてます 🙁
ミラーレスはファインダーを覗けば老眼でもメガネのままみられるのと、周囲の明るさが関係ないのが秀逸。
撮れてる結果にはもちろん変わりはないのですが、現像するまでかなりドキドキします。
この写真もEVが低いせいもあって、実は現場ではしっかり細部まで確認できてなかったんだよね…帰って現像するまで気が気じゃなかったよ。
ただ、CanonはそもそものRAWのプレビューも汚いよね。
SONY α1を使っていたころは本当に綺麗だったし、その点はうらやましいね。
3. シャッター音が爆音
EOS R7を使っていて「メカシャッターうるさいな」と思ってましたが、EOS-1D X mark IIIを使ってみて「うるささのレベルが違う」と感じます。
EOS R7のメカシャッター音なんて、かわいいものですね 😛
周囲が電子シャッターで静かに撮っているなか、超爆音で16コマ/秒の連写をする強いハートが必要になります。
これから更にミラーレス化が進んでいきますので、あと5年ほどEOS-1D X mark IIIで戦うなら相当な覚悟が必要です。
ただ、撮影者は最も近くでシャッター音を聞いていますので、実は周囲からはそうでもない可能性はあります 🙂 希望的観測
カワセミ撮影をはじめ大砲レンズを使ってる人はR3やZ9、α1を使ってる人が多いのでその中で爆音を響かせるのは気がひけます。
つい数年前までは全員メカシャッターだったのにね。
ただ、この爆音は写真を撮ってる気分になれるので好きなんですけどね。
爆音で鳥が逃げるような実害がなければ良いんじゃない?
感覚的にはシャッター音で逃げられたことはないけど、レンズを向けたら逃げられることはよくあるね。
EOS-1D X mark IIIのAF
1. AFエリアに被写体を入れれば撮れる
EOS-1D X mark IIIでは私くらいのスキルでも、カワセミをAFエリアにいれるだけで90%くらいの高確率でジャスピンで撮影することができます。
「そんなの当たり前では?」と思われるかもですが、ミラーレスで撮ってみるとこの「確実性」の重要さが身に沁みます。
AFエリア内にいる被写体に即座にピントを合わせる、この原始的なAF性能はCanonのカメラの中では断トツです。
AFエリアに被写体を入れても、トラッキングなしではなかなかピントがあってくれないのがミラーレス。
撮影していて何故ピントが合わないのかがわからないのが、とにかく厳しいな。
EOS-1D X mark IIIの場合は追尾はできないけど、AFエリアに入れさえすれば確実に撮れるのが非常に大きい。
2. AFエリアに被写体を入れなくても撮れる
「一体なに言ってるんだ?」という話なんですが、このショットは綺麗に撮れているようにみえるものの実はAFエリア内にカワセミをあまり捉える事ができていません。
なので微妙にボケてるんですが、DxO PureRAW3やAdobeスーパー解像度とCaptureOneで十分シャッキリさせられる程度には撮れています。
どういうことかというと、EOS-1D X mark IIIは測距の精度が非常に高く、”水面自体”を捉えてくれているので大きくピントが外れないんですね。
ですので、カワセミ自体をとらえられなくてもレンズが近くの水面に向いてさえいれば、それなりに撮れていることが多いです。
EOS RシリーズのAFは”水面自体”ではなく、水面に写っている遠くの背景にピントを合わせようとして、ピントを大きく外してしまうことが非常に多いですね。
未熟な私としてはこれは歩留まり向上にかなり大きなファクターだったりします。
カワセミの近くの水面でAFしてもピントが大きく外れないことで、その後しばらくしてカワセミ本体にピントが合う可能性がグっと高まります。
この辺りはクアッドピクセルCMOSや測距アルゴリズムの改良でミラーレスでも改善するのかもしれませんが、少なくともEOS R1以降になるんじゃないかと思ってます。
EOS-1D X mark IIIで飛び込み先の水面にピントを合わせる時は、水面にレンズを向けてAFを発動させるだけでいいけど、ミラーレスはMFじゃないと合わないことが多いね。
大デフォーカスからの復帰が苦手だったりするのも、同じ理由な気がしますね。
EOS R1ではクアッドピクセルCMOSを採用して何か改善してくるのか、飛躍的にAIの精度を上げてくるのかCanonの方針が気になるね。
まとめ
一眼レフは長い年月をかけてAFを磨いてきたので、ミラーレスもこれから長い時間をかけてAFが進化していくと思われます。
ただ、現時点ではEOS-1D X mark IIIのAFの方が優れている場面もまだまだ多いのが現状です。
私はもともとEOS R7 + RF600mm F4L IS USMを使っていて組み合わせとしてはEOS Rシリーズの野鳥撮影の最終装備のような状態だったのですが、カワセミ撮影のためにRFロクヨンを売却してEFレンズ構成にしてEOS-1D X mark IIIで使う事を選びました。
AIによるRAW現像の進歩でまさかEOS-1D X mark IIIの欠点が補われるとは思っていませんでしたが、今は非常に快適に撮影をしていますので正解だったかなと思ってます。
年末くらいにEOS R1が発表になって購買意欲が高まる可能性はありますが、なんとなくEOS R1 mark IIくらいまではこのまま使っているんじゃないかなという気がしています。
というくらい、装備に不満がないのが今の状況ですね 🙂
EOS-1D X mark IIIは、すぐ2年後にEOS R5が発売されてミラーレスの時代に取り残されたフラグシップのように感じられますが、非常に素晴らしいボディですのでEFレンズを当面使う方は動体撮影用に検討してみても良いのでは? 🙂
ミラーレスが言う事を聞いてくれなくて溜まっているストレスを発散できるかもしれませんよ 😛