はい、Canonの新しい情報を出さないのでそろそろ書くネタがなくなってきました 😛
というわけで私が初心者の時に知っていたらこんなに苦労しなかったのに…というTIPSを紹介していきたいと思います。
撮影時に調整せねばならない基本的な設定
撮影時に調整せねばならない基本的な設定は以下の4つで、これらはどれかを優先するとどれかを下げねばならないというトレードオフの関係になっています。
絞り
「絞り」とはレンズの中にある絞り羽根を動かし、穴を大きくしたり小さくしたりしてレンズを通る光の量を調整する機能のことです。F値の数字が小さいほど穴は大きく開き(開放)、数字が大きいほど穴は小さくなります(絞る)。絞りを操作することでF値が変化し、センサーに届く光の量を調節=露出をコントロールすることができます。
https://personal.canon.jp/articles/beginner/glossary/f-chi
まずは絞り、F値で表します。
F値といえばレンズにもF値があると思いますが、600mm F4ならばF4まで、800mm F5.6ならばF5.6まで絞りを開放できるレンズという意味になります(開放F値と言います)。
F値は小さいほど多くの光を集めることができるので、基本的にはF値が小さいレンズほど他の設定に余裕を持たせることができるため有利な点が多くなります。
またF値が低いとボケが大きくなる(被写界深度が浅くなる)ため、野鳥撮影では被写体を立体的に見せることができる反面、全体をシャッキリ撮る事は出来なくなります。
昔のレンズは開放F値ではシャッキリと解像しないことが多く、1段絞って使う事で大幅に改善することがあったのですが、近年のレンズは開放からシャッキリしているものが多いですね。
F値
F値は、1、1.4、2、2.8、4、5.6、8、11….といったようにx1.4ごとに1段暗くなります。
1段絞るというのは光量が1/2になるという意味です。
https://av.jpn.support.panasonic.com/support/dsc/knowhow/knowhow11.html
F値はそもそも焦点距離をレンズの有効口径で割ったものです。
ロクヨンならば、600mmの焦点距離で有効口径は150mm、600 / 150 = 4という具合です。
センサーに当たる光の量はレンズの面積に比例するので、光の量が倍になったら面積が2倍で口径はx1.4、逆に光の量が1/2になったら面積は1/2で口径は÷1.4になります。
https://personal.canon.jp/product/camera/rf/extender-rf14
またセンサーに当たる光の量は焦点距離の2乗に反比例しますので焦点距離が1.4倍になると光の量は1/2になってしまいます。
テレコンが良い例ですね。
初心者の頃は「焦点距離がx1.4になるなんて、なんてお得な」と思ってしまうのですが、同じ口径のレンズで焦点距離がx1.4倍になるわけですので、当然F値は1段暗くなってしまいます。
さらに様々なレンズで焦点距離をx1.4倍にできる汎用的なアイテムですので、当然テレコンなしのマスターレンズで使用するより画質は低下します。
この「1段」という表現はいろんな場所で使いますので、おぼえておくと便利です。
カメラ用語で1段というのは1/2、または2倍になる事を指すと憶えておきましょう。
シャッタースピード
https://cweb.canon.jp/eos/special/beginner/column13/
シャッタースピードはその名前の通りでセンサーにどれだけの時間光を当てるか(露光時間)の設定値となります。
単位は秒で一般的にSSと略されますが、例えばSS 1/100ならば0.01秒です。
光の量は露光時間に比例しますのでシャッタースピードを1段遅くすると(2倍の露光時間)、F値を1段上げても同じ明るさで写真を撮影できることになります。
手振れ補正とシャッタースピード
https://personal.canon.jp/product/camera/ef/ef600-f4l-is-iii
例えばSS 1/100で撮影した場合に手振れ補正4段分のレンズを使うと、2の4乗=16なのでSS 1/1600で撮ったのと同じくらいにはブレを抑制できるという意味になります。
一般的に手振れせずに写真を撮るには、1 / 焦点距離のシャッタースピードが必要と言われていますが、そこから算出して例えばロクヨンの場合は SS 1/600 で手振れなく撮れるはずだからSS 1/37でも撮れる…とかいう逆算はやめておいた方が無難です。
というのも、センサーの画素ピッチによって手振れしないSSは変化するためです。
フルサイズ2000万画素の場合とAPS-C 3250万画素の場合は後者の方が圧倒的にブレやすいんですよね。
ISO感度
https://global.canon/ja/environment/bird-branch/how-to-photograph-birds/lesson9/index.html
ISO感度はセンサーの感度のことで、「どれだけセンサーが受けた光を増幅させるか」の値となります。
ISOの値が大きいほど増幅率が高くなります。
ISO100と比べてISO6400は64倍つまり2の6乗ですので、6段分感度を増幅しているわけですね。
ISO感度を増幅するという事はそれだけ少ない量の光で明るく見せようとしているわけですので、当然ながら画質は低下していきます。
ISOの1段はF値の1段に対応していて、ISOを1段上げてF値を1段上げれば同じ明るさで撮影ができます。
センサーサイズと画素数、ISO耐性
ボディ | センサーサイズ | 画素数 | 画素ピッチ |
EOS-1D X mark III | 約35.8mm x 23.9mm | 2010万画素 | 約6.52μm |
EOS R3 | 約35.8mm x 23.9mm | 2410万画素 | 約5.96μm |
EOS R5 | 約35.8mm x 23.9mm | 4500万画素 | 約4.36μm |
EOS 7D mark II | 約23.6mm x 15.8mm | 2020万画素 | 約4.29μm |
EOS 5Ds R | 約35.8mm x 23.9mm | 5060万画素 | 約4.11μm |
EOS R10 | 約23.6mm x 15.8mm | 2420万画素 | 約3.92μm |
EOS R7 | 約23.6mm x 15.8mm | 3250万画素 | 約3.39μm |
センサーサイズが大きいほど当然取り込める光の量は増えますので、ISO耐性は高くなります。
逆に画素数が多いという事は1画素あたりに取り込める光の量が少なくなりますので、ISO耐性は低くなります。
これだけを聞くと「じゃあ低画素のフルサイズが無条件で綺麗なのか」という話になるのですが、当然そうではなく、APS-C高画素などに比べるとISO耐性が高いかわりに解像度が劣ります。
ですので野鳥を精細にかつ綺麗に撮りたい場合には、できるだけ焦点距離が長くて、できるだけ開放F値の小さいレンズを、それに見合った画素ピッチのセンサーで使用することが重要になるわけですね。
露出補正
https://faq.canon.jp/app/answers/detail/a_id/100268/~/%E3%80%90%E3%83%87%E3%82%B8%E3%82%BF%E3%83%AB%E4%B8%80%E7%9C%BC%E3%83%AC%E3%83%95%E3%82%AB%E3%83%A1%E3%83%A9%E3%80%91%E5%86%99%E7%9C%9F%E3%81%AE%E6%98%8E%E3%82%8B%E3%81%95%E3%82%92%E8%AA%BF%E6%95%B4%E3%81%97%E3%81%A6%E6%92%AE%E5%BD%B1%E3%81%99%E3%82%8B-%2F-%E9%9C%B2%E5%87%BA%E8%A3%9C%E6%AD%A3%E3%81%AE%E8%A8%AD%E5%AE%9A%E6%96%B9%E6%B3%95-%28eos-90d%29
露出補正は、測光で適切とされた明るさからどれだけ暗く/明るく撮影するかという補正のことです。
EV±という表記をされますが、EV-1は1段…つまり光の量を1/2で撮影するという設定となります。
光が強く白飛びが起きるような場合にEVを下げて撮影したり、逆に空などの明るいバックで撮影する場合にはEVを上げて撮影したりします。
当然、EVの1段はF値の1段に対応していて、EVを1段下げると写真が暗くなるかわりに他の設定に1段分の余裕ができることになります。
EVを下げて撮るメリット
EVを下げて撮ることで、他の基本設定であるF値やSS、ISOに余裕を持たせることができます。
「暗い写真をとっても仕方ないじゃないか」と思われるかもしれませんが、RAW撮影の場合写真は14bitという細かい単位で明るさを保存しているため、RAW現像時に露出を2~3段分ほど補正しても画質的には大きな影響はありません。
もちろんEV±0で撮れるにこしたことはありませんが、焦点距離が必要な野鳥撮影では常にF値やSS、ISO感度には余裕がありません。
EVを下げての撮影は野鳥撮影において非常に有効な手段ですので、憶えておくと高いお金を払って高級な機材を購入する必要がなくなるかもしれませんし、試してみることをお勧めします。
このサイトでの野鳥写真はほとんどがEV-1~EV-3で撮影されています。
※RAW現像しない場合はEVは適正値で撮らないとかなり厳しい画質になります
撮影時の調整の順番
0. 絞りF値
F値は低いほど他の基本設定に余裕を持たせることができますので、開放F値を使っての撮影になる事が多いと思います。
絞ると被写界深度が深くなって撮りやすくなる場面はありはするのですが、実際は野鳥を近距離で撮れるシチュエーションは少ないため、ほとんどの場合で開放F値で撮影で問題ありません。
フレーム内に複数の鳥がいて、すべてをシャッキリ撮りたい場合などには絞りますが、写真家的な活動をしない限りは稀です。
1. 露出補正
被写体の背景がどういう状態かで露出補正を調整します。
背景が空などで明るい場合はEV±0~EV+2くらい、バックが通常背景の場合はEV-3~EV-1に調整します。
Canon機では撮影前に絞り羽を実際に動かしてどのくらいの明るさで撮れるか試せますので、絞りボタンなどで確認しましょう。
慣れるとその際にどのくらいディテールが見えるかで判断できます。
余裕がある場合はEVを高くしても良いですが、画質的に許容できるだけ下げて、他の基本設定に余裕を持たせた方がベターなように思います。
2. SSとISO
ここまでの設定は機械的に決められるものなのですが、SSとISOが野鳥撮影では最も悩ましい設定になります。
素早い被写体の場合はISOが上がってもSSを上げないといけませんし、逆にあまり動かない被写体の場合はSSを下げてISOを確保した方が綺麗です。
SSについては被写体ブレをどのくらいのSSならば抑えられるかによって調整しますのでケースバイケースです(被写体の速さなどによる)。
ISOについては被写体画素数をどのくらい確保できるかなどでも許容値が変わりますので、これもケースバイケースです(大きく撮れる場合はノイズはあまり気にならない)。
画質を求めてSSを下げた結果、被写体ブレが大きくて使いものになるショットがなかったり、その逆でSSを優先した所、ISOが上がりすぎて使いものになるショットがなかったり…。
慣れてくると「自分の許容値」がわかってきますので、どんどん撮影しましょう。
まとめ
初心者向けTIPSということで、第一弾は「絞り、SS、ISO、露出補正」の関係について書きました。
初心者の嫁(こゆみ)が野鳥撮影をするにあたって、知っておくと便利そうなことを今後もちょくちょく書いていこうかと思います。
では、頑張っていきましょう 🙂